動脈硬化によって引き起こされる脳・心臓の病気が中年以降の人の死因の上位を占めています。厚生省(現厚生労働省)が「成人病」と呼んで、主に健診を中心とする早期発見・治療を提唱しました。 更なる効果をあげるため、生活習慣を見直すことで発病を抑えることが重要であるとの観点から、病名を「生活習慣病」と改めて対策を行なっています。平成20年からは特定健康診査(メタボ健診)・特定保健指導がスタートしました。
2007年の厚生労働省の国民健康・栄養調査では、糖尿病が強く疑われる人は約890万人、糖尿病の可能性を否定できない人は約1320万人と推定されていて、現在も増加しています。
食べ物の中の糖質(炭水化物)は小腸でブドウ糖に分解されて吸収され血液中に入り肝臓に運ばれます。このときにすい臓からインスリンというホルモンが分泌されて身体の組織でブドウ糖を取り込むのを促し、エネルギー源として有効利用し、血糖値を一定に保ちます。 インスリンが十分に分泌されなかったり(インスリン分泌低下)、効きが悪くなる(インスリン抵抗性)ことで、ブドウ糖が肝臓や筋肉などの組織に取り込まれずに、血液の中で血糖値が高い状態が続いてしまうのが糖尿病です。
糖尿病の多くは2型糖尿病と呼ばれるもので、糖尿病になりやすい体質(遺伝)を持つ人に、食べ過ぎや運動不足、肥満、ストレスなどの生活環境の要因が加わって起こります。欧米型の食生活への変化、車社会への変化が背景になっています。
糖尿病になっても、血糖値がかなり高くならない限り、特徴的な症状(のどが渇く・水をたくさん飲む・尿がたくさん出る)はみられません。 しかし、血糖が高い状態を放置しておくと、やがて血管に障害を来たし全身のさまざまな臓器に合併症が起こってきます。糖尿病の治療の目標はこれらの合併症を予防し、生活の質(QOL)を高めることです。
①細小血管障害
糖尿病に特有な合併症で3大合併症と言われます。これらの合併症による失明、下肢の切断はそれぞれ年に約3,000人みられ、人工透析を受けている人(約30万人)の約半数で糖尿病が原因とされています。
②大血管障害 糖尿病は動脈硬化を進めることで心筋梗塞や脳梗塞などの発症の危険性を高めます。高血圧・高脂血症や肥満、喫煙などの動脈硬化を進める危険因子を併せ持っていることも多く、注意が必要です。
糖尿病が増えている原因として欧米型の食事、運動不足があげられ、予防・治療においても食事・運動療法が大切です。薬物療法では新しい経口薬が導入されています。
血圧とは心臓が送り出している血液が血管に加える力(圧力)のことで心臓が収縮した時の圧を収縮期血圧(最高血圧)と拡張期血圧(最低血圧)を測ります。
高血圧は収縮期血圧(最高血圧)が140mmHg以上かつ/または拡張期血圧(最低血圧)90mmHg 以上とされます。近年は、家庭血圧計が普及してきて135mmHg/85mmHg以上を家庭血圧での高血圧基準とされました。 血圧が高くても特有な症状は見られませんが、高血圧が長く続くと全身の血管に障害を与えて、特に脳・心臓・腎臓などの臓器では重篤な合併症を引き起こすことがあります。高血圧の多くは本態性高血圧と呼ばれ、はっきりとした原因は不明ですが、遺伝的素因がある人に塩分の多い食事・運動不足・ストレスなどが加わって起こると考えられています。
食塩(NaCl)は動物が生きていくために必要不可欠なものです。海から陸に上がった動物はナトリウム(Na)をからだの中に貯える仕組みを備えました。ですから人を含めて動物は、少しの塩でも生きていけるのです。 ところが人は食塩の美味しさを覚え、しかも現代では入手が容易となって、過剰に摂るようになりました。1950~1960年代にかけて日本人では脳出血による死亡が多く、疫学調査で食塩の摂りすぎによる高血圧が原因とされました。その後は減塩によって脳出血は減少してきています。現在日本人の食塩摂取量は減ってきていますが、1日平均11~12グラムとまだ多いようです。 食塩の制限の目標は高血圧治療ガイドライン2014で6g/日未満とされました。
【動脈硬化を防ぎ、脳・心臓・腎臓の疾患を予防するため】
高血圧によって引き起こされる合併症には、脳出血・脳梗塞などの命に直接かかわる疾患があり、高血圧は「サイレント・キラー」と呼ばれています。一命を取り止めても後遺症を残したり、「ねたきり」となることがあります。
血液中にはコレステロールと中性脂肪(トリグリセライド)と呼ばれる脂質があります。コレステロールは細胞膜やホルモンの材料として、中性脂肪はエネルギー源として利用される大切なものです。 コレステロールや中性脂肪(トリグリセライド)が高くても自覚症状はなく血液の検査で初めて判ります。
血液中のLDLコレステロール(悪玉)や中性脂肪(トリグリセライド)が多過ぎる、HDLコレステロール((善玉)が少な過ぎる状態をいいます。 脂質は油なので水に溶けないため血液中では蛋白質、リン脂質などとともにリポ蛋白という粒子となって存在しています。LDLコレステロールやHDLコレステロールはリポ蛋白の一種です。 LDLコレステロールは肝臓からコレステロールを組織へ運ぶ働きをしていますが、多すぎると血管の壁に入り込んで動脈硬化を進みやすくするため「悪玉」と呼ばれます。 HDLコレステロールは組織の余分なコレステロールを肝臓へ戻す働きをしていて、動脈硬化の進行を防いでくれるので「善玉」と呼ばれます。 中性脂肪(トリグリセライド)は皮下脂肪に蓄えられエネルギーとして利用されますが、甘いもの・油ものを多く食べたり、運動不足では血液中に増えてきます。またHDLコレステロールが減るため動脈硬化を進みやすくなります。
伝的な素因のほかに、原因の多くは不適切な生活習慣で、過食、高脂肪食、運動不足、肥満などによるものです。「家族性高コレステロール血症」は遺伝が強く関係しています。 他の病気(甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群など)や薬剤(ステロイド剤、経口避妊薬など)によるものや、閉経後の女性にみられることがあります。
高脂血症(脂質異常症)が長く続くとコレステロールが血管の壁に入り込んで硬く脆くなり、内腔が狭くなります。特に心臓の血管(冠動脈)におこると狭心症や心筋梗塞の原因となります。 また動脈硬化を招く「危険因子」は他に生活習慣に起因した肥満・喫煙・ストレスなどがあり、これらの因子が複数になると心臓病や脳卒中の危険が高まります。
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